イノベーションを起こす組織を目指して「U理論」【組織を作るために参考になる書籍の紹介】
「外側の問題は内側の問題を映し出す鏡である」前書きにかかれた、この言葉こそ、本書が探っていく「変化」を生み出す技術の根本になるものです。
過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術として、C・オットー・シャーマーは本書において、「自分自身やほかの人々が未来の最高の可能性とつながり、それを実現する」ための5つの動きを上げています。宗教的、東洋的な思想、さらには禅の世界観とも感じられるような思考プロセスですが、対応する概念としてあげられている「不在化」と対比すると、より理解しやすいものとなります。
・共始動〔Co-initiating〕他者に耳を傾け、人生があなたに何をすべきかを呼ぶ声に耳を傾ける。
「不在化」の状態であれば、自分を他者から切り離し、否定する、関知しない、さらには、自分自身も切り離してしまう。
・共関知〔Co-sensing〕もっとも可能性のある場所へ行き、頭と心を大きく開いて耳を傾ける。
「不在化」の状態であれば、これまでのやり方に固執してしまう。
・共プレゼンシング〔Co-presencing〕一歩下がって内省し、内なる叡智を出現させる。
「不在化」の状態であれば、自分自身、そしてこれまで決めてきたことに固執して壁をより強固にしてしまう。
・共創造〔Co-creating〕新しき者のマイクロゴズム(小宇宙)をプロトタイプし、実践することを通して未来を探究する。
「不在化」の状態であれば、欺瞞に満ちて、すべて悪いのは誰かのせいだということにする。
・共進化〔Co-evolving〕出現する全体性から見て行動し、イノベーションの生態系を育てる。
「不在化」の状態であれば、破壊や破滅へと導かれてしまう。
ボリュームのある書籍で、考え方を指し示す内容が詰まっていますが、規模を問わす組織のリーダーの方に読んでいただきたいのは、「第18章組織の行動」です。
組織がどうして、このようになってしまったのか。自らの組織の課題だけではなく、取引先や連携先の組織について、掘り下げて考え、次の仕事の進め方についてもつながるようにします。
組織構造が病理を抱えれば、組織的無知が組織的傲慢を生み、組織的慢心という不在化の状態となり、組織化した情報操作を行い、組織制度の硬直化をまねく。現代の組織の課題がそこにあり、その根深さを考えざるを得ません。ではどうすればよいのか、そのためにどのように取り組むのか、登る山の高さを提示しています。
変化する時代に柔軟に対応するために、新しい経済的革新を引き寄せるために、一度は触れていただきたい書籍です。
U理論[第二版]~過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術~
2017年
著者 C・オットー・シャーマー
訳者 中土井僚 他
発行 英治出版株式会社
ISBN978-4-86276-247-4
有限会社河野経営研究所 代表取締役 河野律子