適正な労働条件の設定

適正な労働条件の設定

農業は労働条件を決めるときの重要な要素が適用除外になっています。労働基準法を下回る部分については無効となり、労働基準法の定めによりますが、そもそも農業は法定労働時間がありません。

法定労働時間の定めがありませんから、時間外・休日労働に対する割増賃金(深夜労働は割増率が必要)の支払い義務もないわけです。

法定労働時間とは、労働基準法で定められている労働時間の限度です。原則として1週40時間1日8時間です。それに対し所定労働時間とは、会社が定める労働時間のことです。他産業では法定労働時間の範囲内で所定労働時間を定めます。農業は法定労働時間を適用しても良いですし(その場合は割増賃金も考慮する)、所定労働時間・休日など独自に定めることもできます。例えば週休1日・1日8時間・週48時間制で所定労働時間を定めても問題はないわけです。しかし、従業員の確保、定着、過重労働防止の観点からも、他産業を意識して労働条件を設定する必要があります。従業員が時間外労働や休日出勤をした場合、適用除外になっているのは割増率ですから、時間外労働・休日出勤代は支払う必要があります。割増率をどうするのかもご一考ください。人材難で悩む中小企業も所定労働時間を週40時間(1日8時間・週休2日)から週37.5時間(1日7.5時間・週休2日)に短縮し労働条件を見直すところもでてきました。農業だからと長時間の所定労働時間を設定していくのではなく、労働基準法の適用除外があるからこそ、経営者は就業条件をしっかりと定めなくてはなりません。その際、経営者自らが自身の働き方を見つめ直す必要があります。労務管理の基本は就業時間管理です。

労働保険・社会保険についても、勤労者のための必要最低限の法定福利です。特に労災保険は、業務上の災害に対し労働者保護の観点から手厚い給付を行ってくれるとともに、給付の範囲で労働基準法の使用者責任を肩代わりしてくれることになります。労働災害を未然に防ぐことが必須ですが、労災保険もない会社で安心して働くことはできません。労災任意適用事業所であっても、必ず加入しておくことが肝要です。

人手不足の時代、農業は「特別だから」という考えを変えて、いかに農業が就職先として「選ばれる」かに向けた努力を行う必要があります。

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