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農作業事故の実態と再発防止対策

農作業事故の実態と再発防止対策

農作業事故の実態

死亡事故、重傷事故、軽傷事故、ヒヤリ、と危ない場面はいろいろありますが、死亡事 故については、しばらく前までは年間400件のあたりを推移していました(図1)。
最近 は少し減少傾向にありますが、65歳以上の高齢者が80%程度と高くなっています。
これだけでは年間件数が多いのか少ないのかが分かりにくいので、他産業と比較してみると、図2のようになります。危険な職種といわれた建設業よりも高い割合で発生しているのが分かります。

農作業死亡事故の推移

図1 農作業死亡事故の推移
※農林水産省資料より作図

産業別就業者10万人当たり死亡事故発生件数

図2 産業別就業者10万人当たり死亡事故発生件数
※農林水産省・厚生労働省資料より作図

また農業就業人口 10 万人あたりの死亡者数をみてみると、男性農業者が減る傾向にあ る一方で、女性農業者が平成 26 年から増え続けており、合計を押し上げる原因となって いることが読み取れます(図3)。増え続ける女性農業者の事故に起因するのは、どんな ことなのでしょうか。要因別に見てみると(図4)、農業機械作業の事故よりも、それ以 外の作業に起因する事故が多く発生していることが分かります。中でも、平成24年〜28年の5年間で40人の方が熱中症で亡くなっているのは、大きな衝撃です。
温熱環境(https://step-wap.jp/resolution/improvement/improvement-method/method-hindrance/

農作業死亡事故の発生状況(平成19年〜28年)

図3 農作業死亡事故の発生状況(平成19年〜28年)
※農林水産省資料より作図

女性農業者の要因別死亡事故発生状況(平成24〜28年)

図4 女性農業者の要因別死亡事故発生状況(平成24〜28年)
※農林水産省調べ

農作業事故再発防止対策

農作業では、原因が似たような類似事故が多発しています。再発防止対策としてどう対応すればよいでしょうか。事故は、人、機械、環境、経営姿勢がそれぞれ複雑に絡んで発生します。事故が起こると、誰もが直接原因を分析して、主原因に対して「○○が悪い」で落着させていますが、それでは再発防止にはなりません。ヒューマンエラーという言葉で表現されることもありますが、当事者だけのエラーではない場合が多いのです。機械に事故を誘発する原因があったり、作業環境維持に問題があったり、安全第一ではない経営姿勢に問題があったりします。したがって、発生した事故を教材として多角的な原因分析をして、再発防止対策を確立・実行することが必要になります。
事故の原因には、機械等によるハード的なものと、作業者の不安全行動に起因するソフト的なもの、環境整備や経営意識に起因するシステム的なものが考えられます。

1. ハード的対策(農業機械の安全装備)

現代の農作業は機械抜きでは成立しなくなっています。そのため、事故も農業機械が関係していることが多いのです。事故が発生しないように、発生しても…できるだけ被害を小さくするために、農業機械にはさまざまな安全装備が施されています。
これには、農林水産省、研究機関、農業機械メーカー等が協力して、国際的にも通用する統一された農業機械安全装備の取り決めがなされています。


事故の原因

具体的には、動いている部分や高温部に容易に接触できないようなガード類の設置、作物・土壌と機械の接する部分は防護できないので注意喚起マークを貼ったり、センサーによる事前防護を施してあります。トラクターの場合は、転倒や転落事故が多いですが、転倒しないあるいは転落しないトラクターの開発には経費と時間がかかるため、事後安全対策として、転倒・転落時にオペレーターを守るためのROPS(Roll-Over…Protective…Structure)が装備されています。
現在、国内で流通している農業機械の95%以上が定められた安全装備を施していますが、一部の機械では、廉価販売を狙って、安全装備を施さないものもあるので導入時には注意が必要です。
なお、これらの安全装備は、点検等のために取り外すことができるものもあります。取り外したことにより、自動的に動力がOFFになる機械と、OFFにならない機械があり、いずれでも動力の停止を確認してから点検に取り組む必要があります。点検後には、かならず元通りに装着し、装備が有効に機能することを確認しなければなりません。

ポイント
ハード的対策のまとめ
・安全装備が施してある機械を選ぶ
・点検後には安全装備を元通りにし、有効に機能するか確認する
・体形等に合った使いやすい機械を選ぶ

2. ソフト的対策(農作業安全のための指針)

農林水産省は、農業者が安全に作業を遂行するためのガイドラインとして「農作業安全のための指針」を定めています。
これは機械の安全装備と両輪をなして事故防止をねらうものですが、加えて、女性農業者の増加に伴い、女性・年少者・高齢者への配慮が必要な項目を上げています。以下ご参照下さい。

  1. 妊産婦、年少者及び高齢者に重量物の取り扱い、高所作業、著しい振動環境下にある作業等危険性の高い作業を行わせないこと。また妊産婦及び年少者に薬剤の扱い及び深夜作業を行わせないこと。
  2. 今後、ますます女性農業者が農業機械操作を行う機会が多くなることから、機械操作の知識や農作業安全への意識の向上を図る講習会を開催する等、女性農業者に対する配慮に努めること。
  3. 高齢者については、加齢により心身機能が変化することを踏まえ、日頃の健康管理を含めた総合的な安全講習の実施を通じ、特に高齢者自身及びその周囲の者の安全意識の向上に努め、作業分担、作業方法等について配 慮すること。また、可能な限り、高齢者が行っている機械作業等危険性の高い作業について、担い手農業者への農作業委託等への誘導を図ること。作業現場は、できる限り誰にでも安全で快適に利用しやすいようにバリアフリー化に努めるとともに、作業機械の選定に当たっては、高齢者等の利用に配慮すること。

「農作業安全のための指針 平成 30 年 1 月農林水産省生産局」のI基本事項 第 1 農作業安全一般に関する 事項
2. 農作業を行う際の配慮事項 (1)日常的な配慮 エ…女性、年少者及び高齢者への配慮 より抜粋

「農作業安全のための指針」をご存知で ない方はこの機会にご一読下さい。ただし、事故防止のための最低限のガイドラインに過ぎないので、これよりは高度な安全作業 に取り組んでください。また社内で農作業者の安全教育を行う場合に、手軽に行えるツールとしてeラーニングがあります。農研機構のHPには「農機安全eラーニング」のコーナーがあり、自分のペースに合わせた学習ができます。
他にも「農作業安全コラム」があり、季節ご との農作業の注意事項等、トピックスが毎月掲載されています。
農研機構のURLは以下をご参照下さい。
http://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/anzenweb/

3. システム的対策

機械の安全装備や人の作業への取り組みが安全であっても、作業環境に不備があったり、組織として経営姿勢に安全意識が欠如・不足したりしていたのでは、全体としての安全性は向上しません。
例えば、安全装備が万全であり、作業者の安全意識が高くても、移動経路に危険個所が複数ありそれが改修されていなかったり、安全のために必要な投資を怠っているような場合には、全体としての安全割合は低くなります。つまり組織として安全対策をしっかりと意識し、作業環境を整備したり作業方法を改善したりすることが、事故を防ぐ有効な手段になるのです。

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