農業における労働基準法適用

農業における労働基準法適用

労働基準法とは、労働者が人たるに値する生活を営むための労働条件の最低基準を定めた法律です。労働者を一人でも雇えば、個人経営、法人経営を問わず、その事業は労働基準法の適用を受けます。労働者に対する使用者責任が発生することを認識してください。

しかし、農業は季節的条件・天候等に左右されやすいことから、労働基準法の適用除外があります。農業は原則として労働時間、休憩、休日に関する規定等「農業適用除外6項目」がありますが、それ以外は労働基準法が適用されます。

近年では農業生産部門に加えて、加工、販売等の経営の多角化を図り、販路開拓や付加価値向上など農業の6次産業化に取り組む農業経営体が増えました。事業の実態によっては、業種が農業ではなく食料品製造業、販売業等とされた場合、労働基準法は例外なく全面的に適用されます。

1.農業適用除外 6 項目(この他は適用除外されません)

除外項目 他産業における法定 農業
労働時間 1日 8時間、1週 40時間を超えて労働させてはならない(休憩時間を除く) 法定による労働時間の限度なし
休憩 労働時間が 6時間を超えた時は 45分以上、8時間を超えた時は 1時間以上の休憩を与えなくてはならない 休憩についての定めなし
休日 1週間に少なくとも 1日、または 4週間で 4日以上の休日を与えなくてはならない 休日についての定めなし
割増賃金 1日 8時間、1週 40時間を超える労働、法定休日の労働、深夜労働(22時~ 5時)については、割増率に乗じた賃金を支払わなければならない(時間外労働 1.25増、法定休日労働 1.35増) 深夜労働にかかる割増率以外の割増率は不要
年少者の特例 満 18歳に満たない年少者を深夜労働に就かせてはならない 年少者へ時間外、休日労働及び深夜労働させることができる
妊産婦の特例 妊産婦が請求した場合には、変形労働時間制、非定型的変形労働時間制を採用している場合であっても、1日または 1週間の法定労働時間を超えて労働させてはならない。時間外労働、休日労働をさせてはならない 時間外、休日労働をさせることができる(ただし、深夜業はさせてはならない)

2.法定労働時間が適用されるケース

  1. 外国人技能実習生
  2. 6次産業化に取り組む場合等場所的観念で判断され、販売は商業、加工は製造業となるケース
  3. 主たる業務が何かにより事業場の業種が判断されるケース
    例)農業生産、加工、販売を行う事業場の主たる業務が食料品製造業と判断される場合

①~③のケースとも、時間外・休日労働の発生には労使間による 36協定の締結、労働基準監督署への提出が必要です。

ポイント
農業は労働時間が長くなりがちです。社員一人ひとりが抱える業務量が過多になっていないか、長時間労働を是とする社内風土になっていないか、経営者は見直す必要があります。長時間労働は社員の疲労やストレスをため、モチベーションを低下させ離職者を増加させます。時間管理を行い効率的な仕事をすることは、長時間労働を抑制し経営力と社員のモチベ-ションをUPさせます。
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