もっと詳しくその2 〜法人化後も家族経営協定は活かせる

もっと詳しくその2 〜法人化後も家族経営協定は活かせる

1.法人経営の主流は一戸一法人!

「わが家の農業経営は、法人化するので、家族経営協定はもう必要ないでしょうか」という声を聞いたことがあります。しかし、こうした問い掛けに対して、筆者は、明確に答えたいと思います。それは、法人化しても家族経営協定は有効に活かせますし、むしろ法人経営の内実を整える上で、積極的に協定やそれに基づく家族の話し合いを行うべきという点です。

わが国農業における法人経営には、数戸の経営の共同化や集落営農によるケースもありますが、家族農業経営を基本としつつ、経営発展のテコに法人化を選んで、一戸一法人となる場合(もちろんそこに若干の雇用者が入るケースもある)が最も主流と言えます。

こうした中で、家族経営協定と法人化は、決して対照的なものではなく、家族農業経営にとって、両者はどちらも経営改善を促す有力な取り組みと位置付けることができるでしょう。

2.家族経営協定と法人経営の関係を3つの視点で!

このような考え方を踏まえて、家族経営協定と法人経営の両者の関係について、そのイメージを図2に示すとともに以下3つの視点から集約しておきたいと思います。

まず第1に、家族経営協定に取り組むことは、法人化を目指す経営にとって、確かな準備過程となります。協定を通じて、経営内の各個人の就業条件の明確化、経営計画の策定、家計と経営の分離に基づく計数管理等を進めることで、実質的な法人化へのステップを築くことになると思います。

第2に、法人化を果たした経営においても、家族の日常的な話し合いを基礎とした協定内容の実践は、前述の通り法人経営としての内実を維持・強化する上で、引き続き有効な取り組みとなります。例えば、法人経営であっても、家族の労働報酬が実際には未払いであったりするケースも存在し、協定の遵守はこうした問題点を解消する要因になると思います。

第3に、家族構成員を主体とした法人経営においては、経営と生活の不可分の課題を、一体的に調整・解決して行く上でも、家族経営協定は多分に意義があると考えます。

とりわけ、家事・介護時間と農業労働時間の調整、家事労働の適正な評価、さらに経営資産の相続や経営継承の問題等については、家族内の合意形成が必要であり、これらの対策に向けて、法人化後も家族経営協定は有効な取り組みと言えます。一戸一法人の多くは、農地等の経営資産を家族内の個人が法人に貸し付ける形をとっており、その所有権者が亡くなった場合には、通常の家族農業経営と同様に、親族間での相続への対処が必要となります。

筆者は以前に、愛知県内で大葉生産を行うMさんの法人を訪問しました。そこでは、法人経営を展開する中で、パートの人達との「就労契約」を明確に定めたことを受けて、家族内各人の役割や処遇も確認し合うことを目的に、家族経営協定を締結したとのことでした。Mさんは、「協定があるからこそ、家族各人の報酬の明確化なども含め、法人と個人の関係もきちんとする」と話されていました。

このように、家族経営協定に盛り込む内容は、法人化を実現して行く上での、いわば道しるべになると思いますし、また、法人化後の経営においても、協定を的確に活かして行く取り組みをお勧めします。

図2:家族経営協定と法人経営の関係のイメージ

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