家族経営協定が目指してきたもの

家族経営協定が目指してきたもの

1.パートナーシップ経営を目指す家族経営協定

家族農業経営内での合意事項を協定書にする取り組みは、わが国において、いまから半世紀以上前の1960年代に、父子協定や親子契約として行われたのが発祥です。

その後、現在の家族経営協定という言葉は、1993年に生まれ95年には農林水産省の二局長通達にも盛り込まれましたので、こうした時期から既におよそ四半世紀が経過しています。この家族経営協定が一貫して目指してきた家族農業経営の姿は、世代間や夫婦間で、農業に従事する家族構成員のみんなが相互に責任ある経営参画を果たし、各人が共同経営者の立場を確立して行く、「パートナーシップ経営」の形成を図ろうというものです。

2.共同経営者とは何か

では、パートナーシップ経営の中身を作り上げる際の、家族構成員一人ひとりが共同経営者の立場を築くこととは、具体的にどのような条件を各人が備えることなのか、次の①~⑥にその主なものを並べておきたいと思います。

ポイント
共同経営者の条件
①家族内での話し合いの場が設定される
→各人が経営の意思決定に参画する
②経営の実態や、各種情報を家族内で共有化
→誰か一人だけで責任を負わない
③家族内で経営目標等を明確化
→その内容をお互いに認識する
④相互にパートナーのやる気の高揚に努める
→各人の能力発揮へとつながる
⑤男女双方の経営内および社会的地位の裏付けを確立
→例えば、男女が共に固定資産を形成、認定農業者の共同申請、男女が共に研修会への
参加・要職就任等も促す
⑥将来設計、老後保障・介護等の対応を明確化
→生活面での協力態勢も構築

3.法人経営のいわば内実を築くのが家族経営協定

農業における経営改善の手段として、法人化と家族経営協定の一体的な推進が重要です。
この両者の関係を集約すると次の①~③の通りです。

ポイント
家族経営協定と法人化の関係
①協定に基づく取り組みは法人化へのプロセスとしても有効
②法人化した後も、家族経営協定は経営の内実を固めて行く上で効果を発揮
③法人化しても解決できない家族農業経営固有の課題の調整に協定を活用

なお、これらの点は、特に大事な論点なので、「もっと詳しくその2- 法人化後も家族経営協定は活かせる –」の別項を立てて、一層掘り下げて行きます。

4.家族経営協定で取り組まれてきた内容

家族経営協定の文書に盛り込む内容は、各農家の経営や生活の状況に合ったものにすることが最も重要です。協定書のひな型も示されていますが、それはあくまでも参考資料として活用して行くべきでしょう。100戸の農家があれば、100通りの協定内容が存在すると考えた方が良いと思います。
筆者はこれまでに、家族経営協定の普及推進にあたってきた各地の関係者と議論をしてきた中で、次のような声をよく聞きました。それは、最初は協定書のひな型をそのまま使った協定書を作成した農家も、その後、実質的な話し合いを重ねて協定内容のアレンジが進んで行くと、その農家の経営や生活の改善へと着実に結び付く協定に発展して行くという趣旨のことです。
家族経営協定の実施をめぐり、農村現場で広く取り組まれてきた協定書の組み立て方や、協定内容の4つの大分類を以下にそれぞれ列記します。これらもあくまでも参考として概観して下さればと思います。

ポイント
協定書の組み立て方
①タイトル(家族経営協定書とするか、各農家独自のネーミングでも良い)
②前文(家族共通の理念や、農業経営の大目標を書き込むことが多い)
③本文(各農家が話し合いに基づいて定める多様な協定事項)
④後文(協定当事者の人数分の協定書を作成して各人が保管することなどを定める)
⑤締結の年月日と、当事者全員の署名押印、立会人の署名捺印等
ポイント
協定内容の大分類
①就業条件の協定 : 報酬・休日等を明確化、職場として実感できる環境づくりなど
②経営展開の協定 : 数字の面から経営の現状把握、家族の経営目標・実行計画など
③世代交替の協定 : 経営移譲のやり方、経営資産等の相続に向けた取り決めなど
④生活条件の協定 : 多世代家族の住まい方、家事・介護・老後保障のことなど
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