ワーク・ライフ・バランスと家族経営協定:後継者の就農・結婚・出産・育児時期

ワーク・ライフ・バランスをライフステージ毎に考えましょう。

初めは、「後継者の就農・結婚・出産・育児時期」のワーク・ライフ・バランスについてです。時系列的には、【後継者の就農時期】と【後継者の結婚・出産・育児時期】に分けてみていきましょう。

【後継者の就農時期】は、成長した子供が仕事として農業を選択し、親と共に家族農業経営に取り組む時期になります。これまで自分たち夫婦、あるいは更に親夫婦も一緒に行ってきた農業経営に、後継者が加わる時期です。後継者は農業を仕事として選んだ一方で、他産業に就職した友人たちと比較しがちな時期でもあります。この時期に後継者に農業へのやる気や自信を持たせると共に自分たち夫婦もこれまでの働き方を見直すのに良い契機としましょう。後継者の農業の担当分野を何にするのか、後継者の就農に合わせて経営規模を拡大するのか、後継者の報酬をどのように決めるのか、一日の労働時間や休日をどうするのか等を後継者の考えも十分聞きながら決めてみましょう。これらを主な内容とした家族経営協定を結ぶと良いでしょう。ある農家は、後継者の就農に合わせて屋敷内別居し朝食と掃除洗濯は別にしたと聞いたことがありましたが、家事についても、後継者に自立を促すことが大切です。このように、後継者の就農の時期に40歳代後半から50歳代に入る年齢の自分たち夫婦のワーク・ライフ・バランスを図ると同時に、後継者がやる気を持って農業を仕事にする生活に魅力を感じることができるようにすることが大切です。「後継者が就農する時期」のワーク・ライフ・バランスを整えることは、次のステップ「後継者の結婚・出産・育児時期」のベースとなる重要なものです。

【後継者の結婚・出産・育児時期】は、後継者が結婚し、新たなメンバーが家族員として加わり、農業と生活を送るようになる時期です。後継者の配偶者は、これまでの家族とは異なる環境で育ち異なる価値観を持っています。そのことを理解しながら、まずは親夫婦と子夫婦のそれぞれの夫婦単位を尊重し、ワーク・ライフ・バランスのとれた農業と生活のあり方について話し合ってみましょう。後継者の配偶者も農業を仕事に選びたいという考えであれば、家族経営協定の中で、経営方針への発言や農業の役割分担、家事の役割分担を位置付けましょう。
妊娠出産時期になれば、母性保護及び胎児の安全を最優先に適切な対応が求められます。その後の育児も大切な次世代育成であります。母親だけに偏らず家族員がうまく分担し育児へ参加することが良いでしょう。保育園や幼稚園も子育てに有効です。このように妊娠出産育児期においては、家族経営協定に産休や育児時間の確保を盛り込むと気兼ねなく休んだり育児時間が確保できます。また、家事・育児も家族農業経営から見ての後継者育成と福利厚生とみなして「報酬」の対象とすれば後継者夫婦の経済的な裁量が広がり生活のゆとりにもつながります。結婚・出産・育児時期は、後継者の配偶者が加わり更に乳幼児が加わる家族の拡大期であります。多世代の家族員が農業と生活に関わるライフステージですので、家族経営協定を活かすことでうまくワーク・ライフ・バランスを取りつつ経営発展も進めていきたい時期です。

一般社団法人家の光協会 理事 齋藤 京子

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