経営管理の進め方

「経営管理」という言葉を聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。もしかしたら「堅苦しい・難しそう」と感じる方もいるかもしれません。あるいは、「ウチは従業員数も少ないし従業員の働きぶりはしっかり見えているよ」という方もいるかもしれません。
しかし、各種人事制度の効果を高めるためには「従業員の行動や成果を客観的に正確に把握すること」が必要不可欠であり、「経営管理」はこれらを見える化するための取り組みとして経営に欠かせない要素と言えます。

例えば、人事評価制度を運用する際に「経営者の主観で従業員の行動や業務成果を評価している」経営体では何が起こるでしょうか。経営者も1人の人間ですから、従業員の行動や業務成果を評価期間(例えば1年間)を通して完璧に覚えておくことは困難でしょう。すると、評価はどうしても「記憶に残りやすい出来事や日頃の印象」に引っ張られることが多くなります。
そのような評価をしてしまうと、経営的な視点からは「経営に本当に貢献している従業員を適切に評価できない」という事態に繋がりやすく、一方、従業員の目線では「社長の好き嫌いで評価が決まっており、組織への貢献度はあまり考慮されていないのではないか」という不満が発生しやすい状況を生んでしまいます。結果、最悪の場合には「組織に貢献してくれている従業員が退職し、経営の継続が危ぶまれる」という事態もあり得るかもしれません。このような事態を避けるためにも、継続的に経営管理に取り組むことが重要です。

ここからは、経営管理の進め方(一例)をお伝えします。まずは「収集すべき情報」の検討を進める必要があり、「収集すべき情報」は大きく分けると、「業績に直接的に影響を与える各種経営数値(10aあたりの収穫量・販売単価・労働時間・各費用等)」と「従業員の働きぶりを把握するための行動記録」の2つが基本となります。
次に、「従業員への説明と納得感醸成への取り組み」が重要になります。各種データ収集を実際に担当する現場の従業員の理解と協力なくして経営管理は進められません。「経営管理の重要性・具体的な進め方」等を社内説明会等で丁寧に説明した上で、全ての従業員が納得できるまで粘り強く対話を続けます。この説明会等で建設的な意見が出された場合は、できる限り意見を尊重した運用へ改善します。実際の運用場面では、「現場負荷の少ないデータ収集の方法」を検討することも重要です。
最後に、「経営管理業務のルーチン業務化」へ取り組みましょう。せっかくデータ収集を始めても、1年で終わってしまっては効果は限定的になってしまうでしょう。現場からの改善要望等にも耳を傾けながら、「1年間の標準スケジュール」等も作成し、定例業務にしていくことが重要です。

経営管理は、それ自体が収益を生む仕事ではないため、すぐには従業員の理解を得られるものではないかもしれません。しかし、経営上重要なデータを地道に蓄積することは、長期的な経営改善には欠かせません。また、経営管理活動を通じて、現場の従業員に経営的な視点を持ってもらうこともできるようになります。まずはできることからでも経営管理に取り組んでみませんか。

AMパートナーズ 代表 篠原 秀紀