コミュニケーション能力を向上したい

1.「ワーク」モードでのコミュニケーションマナー

① 仕事におけるコミュニケーションで求められること

農業においても、仕事である以上、問題への対応を協議したり、速やかに対処するための指示出しをしたりする必要があります。仕事上のコミュニケーションがうまく機能するかどうかで、生産性も大きく変わります。 家族経営の農業者であっても、メンバー間のコミュニケーションが、普段の「ライフ」モードとは異なる、「ワーク」モードでやり取りできることが重要になります。 「ワーク」モードでのコミュニケーションのポイントは、以下のようになります。

イ.ビジネスマナーを意識する

例えば、朝のあいさつの際に、「本日もよろしくお願いします」というフレーズを付け加えることで、家庭でのあいさつとは違った印象になります。 また、仕事中の会話でも、外部の人の行為に対しては尊敬語を使用し、身内や自身の行為に対しては謙譲語を使用することで、仕事らしい会話の雰囲気になります。
「ワーク」モードへの切り替えとなるあいさつ
シーン あいさつの言葉
出勤 「おはようございます」「よろしくお願いします」
退勤 「お先に失礼いたします」「お疲れさまでした」
感謝 「ありがとうございます」
依頼 「お願いいたします」
謝罪(言い訳する前に) 「申し訳ございません(ありません)」 「大変失礼いたしました」
話しかける時、仕事中なら 「恐れ入りますが」「お仕事中失礼いたします」
「分かりました」の代わりに 「かしこまりました」または「承知いたしました」

ロ.合理的である

仕事での会話は、「簡潔」で「スピーディ」であることを旨とします。仕事中の会話においては、不必要な情報や余計な感情はできるだけ排する一方で、「言わなくても分かるはず」という思い込みは持たずに、きちんと言葉にして伝えることが大事です。 つまり、「ワーク」モードの会話では、仕事を効率的に進めるための要素である「合理性」が最も重要視されるということです。
合理的に会話を進めるための4ステップ
合理的に会話を進めるための4ステップ

ロ.合理的である

プライベートを共有する夫婦という間柄であっても、仕事中の会話においては、「ビジネスパートナー」として相手を認識することを心掛けます。 ビジネスパートナーであるお互いの関心事は、農業という事業の維持・拡大であり、あらゆる判断において、そこを起点に発想します。両者が「事業拡大」という同じ方向を目指して進むことができれば、「ワーク」モードでの日常会話も建設的に展開できるようになります。

2.相手を動かすコミュニケーション ~「エトス」「パトス」「ロゴス」~

① 相手を動かすための3ステップ

仕事におけるコミュニケーションの目的は、「相手を意図した方向へと動かすこと」ともいえます。しかし、当然ながら相手は「生身の人間」であり、機械に信号を送って動かすようなわけにはいきません。 相手が人間である以上、まずは相手に会話の土俵に上がってもらうことが大事であり、その上で相手の気持ちに配慮しながら、筋道立てて話をしていくことが必要です。
相手を動かすための3ステップ

② 相手を動かす 3 つの要素 ~「エトス」「パトス」「ロゴス」~

「エトス」「パトス」「ロゴス」とは、古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスが弁論術の中で説いた、人を説得し、動かすための3つの要素のことです。この3つの要素は、先ほど提示した「コミュニケーションの土俵に上がってもらう」 「話を聴く気持ちになってもらう」「話を理解してもらう」というコミュニケーションのステップそれぞれに密接に関係しています。

③ 直感と感情が先、論理は後

「エトス」「パトス」「ロゴス」のうち、どれが一番大事かを一概に言うことはできません。 ただし、「エトス ⇒ パトス ⇒ ロゴス」の順番を意識することは重要です。これは、人間の脳が、まず直感で判断されるものを受け入れ、次に好き嫌いのような感情で判断されるもの、そして、最後に思考を通して判断するものを受け入れる構造になっていることとも関係しているといわれています。
直感と感情が先、論理は後

3.意見対立を恐れない ~アサーティブコミュニケーション~

① 双方の考えを尊重しつつ意見を主張する

相手と意見が対立する場面では、つい感情的になってしまい、前向きな解決へと導くことができなくなってしまうことがあります。 こうならないためにも、まず相手の意見にきちんと耳を傾け、それを尊重する姿勢を見せつつ、自身の考えや気持ちを相手に伝えることが大事です。こうした相手との意見調整の手法を「アサーティブコミュニケーション」といいます。

② アサーティブコミュニケーションとは

アサーティブコミュニケーションを理解するにあたっては、それとは対極的な 2 つのコミュニケーションスタイルと比較して見ると、より分かりやすくなります。

イ.非主張型のコミュニケーションスタイル

自分の考えや気持ちを尊重しない、または表現できないタイプの人のコミュニケ―ションスタイルです。相手の要求をそのまま受け入れてしまうことになり、ストレスを抱えたり、要求にこたえられずに責められたりする状況に陥りがちです。
思考のパターンの例
「こんなことを言ったら迷惑がかかるかもしれない」(ここは我慢して黙っておこう)
「断ったら相手の機嫌を損ねるかもしれない」(嫌だけど引き受けておこう)
「こんなことをお願いしたら不満を覚えるに違いない」(自分でやるしかない)

ロ.攻撃型のコミュニケーションスタイル

自分の意見を押し通し、自身の考えや気持ちを優先させようとするタイプの人のコミュニケーションスタイルです。その場では思い通りに事を進めることができたとしても、後々問題が起きたり、まわりからもう関わりたくないと敬遠されたりしがちです。
思考のパターンの例
「私は正しい」(だから、相手の意見なんて聞かなくていい)
「私は相手より優位に立っている」(だから自分の好きにしていい)
「相手は私に迷惑をかけている」(だから、大声で怒鳴っても良い)
アサーティブコミュニケーションは、以上のどちらとも異なり、相手と自分の両方の考えや気持ちに思いを巡らせたうえで、「それでも私はこうしたほうがいいと思う」とか、「あなたのその考えには同意できる」といった意見を主張することです。

③ アサーティブコミュニケーションの基本的な流れ

アサーティブコミュニケーションは、次の4つの手順を意識しながら進めることで、実践しやすくなります。
アサーティブコミュニケーションの基本的な流れ