自ら成長していく組織を目指して「学習する組織」【組織を作るために参考になる書籍の紹介】

そもそも、組織って何なのでしょうか。自分一人だと、自分で考え自分で動き、結果はすべて自分の責任になります。様々な定義がありますが、複数の人が一つの目的に向かって働く、それを組織とすれば、自分一人ではないことでの様々な課題が浮かび上がります。
パートナーと二人であっても、家族単位の経営であっても、従業員を雇用する経営であっても、ひいては大企業であっても、組織が抱える課題には共通する項目が多くあります。
「学習する組織」は、マサチューセッツ工科大学の経営大学院上級講師のピーター・M・ゼンゲ氏が、1990年に執筆され2006年改訂、2011年に邦訳された、経営者が組織の本質について考える糧となる書籍です。
「学習する組織」となるために、積み上げていく道筋について、「システム思考」をその要としてあげ、解決の糸口や方向性を示している書籍です。
さて、あなたの組織は、あなたの組織にいる人は、次のような状態に陥ってはいませんか?

① 「私の仕事は〇○だから」
自分の目の前の仕事、仕事上の役割だけを見ていると、いろいろな事柄が関連して、それに無関係ではないのに、責任感を感じない。さらには、自分ではない人が問題を起こしたと考えてしまう。
そういう人がいる組織になってはいませんか?

② 「悪いのはあちら」
「私の仕事は〇〇だから」と考えると、他部署や他組織に責任をおしつける「悪いのはあちら」という考え方に至りがちです。「悪いのはあちら」と決めつけて、自分の職務がどのように影響するのかという考えをやめてしまえば、常にそれは「あちら」が起こした新しい問題と誤解してしまい、その問題に追われてしまうことになってしまいます。
そういった組織内外への責任転嫁をしていませんか?

③ 先制攻撃の幻想
難しい問題に直面した時、「先手必勝」「攻撃は最大の防御」などと、ただただ、先手を打つということが正解だと思ってはいませんか。
あちらにいる敵と戦うのではなく、私たち自身が「なぜ」「どのように」問題を引き起こしたのか、それを理解することをしていますか?

④ ゆでガエルの寓話
煮立った湯の中にカエルを入れたらすぐに飛び出すのに、徐々に温かくなる水のなかではカエルはゆだってしまう。突然の変化には反応するけれど、ゆっくりした変化には気づきにくいものです。
気が付いたらこうなってしまった。たいした事はないと思っていたのに。そんなことが、これまでにありませんでしたか?

⑤ 「経験から学ぶ」という妄想
経験を通じて学ぶことは、仕事をするうえで最も大きな学びになります。組織が大きくなればなるほど、組織に属する人は意思決定につながる情報を多く入手することが可能ですが、重要な意思決定とその結果への責任を経験することは少なくなっています。一方、組織が小さいほど、重要な意思決定でありながら、意思決定に必要な情報を入手することなく結果を導き出してしまいます。
複雑な課題の分析を経ない経験で、責任を伴わない経験で、経験則を語っていませんか?

⑥ 経営陣の神話
「みんなで決めたものだから」は本当にみんなで決めたものなのでしょうか。自分が個人的にかっこ悪く見えることを避けたり、全体としてまとまったチームであるという印象を持たれないために、「まとまったチーム」を演じてはいないでしょうか。
「みんなで決めたものだから」を肯定しようとして、課題を解決しないことにはなっていませんか?

自らの組織を振り返り、次に進むために「第2章あなたの組織は学習障害を抱えていないか?」の7つの項目を、筆者の意図をくみ取り、個人的な解釈を加えてみた問いです。
少しでも心にひっかかることがあれば、また、「システム思考」を知りたいと考えたら、本書を手に取って頂けるとよいと思います。

学習する組織~システム思考で未来を創造する~
2011年
著者 ピーター・M・ゼンゲ
訳者 枝廣淳子 他
発行 英治出版株式会社
ISBN978-4-86279-101-9

有限会社河野経営研究所 代表取締役 河野律子