ワーク・ライフ・バランスと家族経営協定:経営発展期~親世代の経営移譲期

経営発展期~親世代の経営移譲期のワーク・ライフ・バランスの特徴と留意点について考えていきましょう。

【経営発展期】は、家族農業経営の中心的担い手が、例えば50~60歳代の経営者夫婦、30~40歳代の子供夫婦と言うといわゆる働き盛りの世代であり、地域社会でも役割も持つなど、農業経営、家庭生活、社会生活共に忙しく充実した時期です。また、趣味やボランティア等個人的な交際のネットワークも広がります。子供たちにとっては、学校生活を送る中で農業にも関心を持ちつつ将来の希望も考え始めます。このような時期の家族農業経営のワーク・ライフ・バランスは、体力もあり無理も効く年代ですが働きすぎに気をつける必要があります。経営拡大にあたっては、家族員と話し合い経営方針を明確にします。必要となる労働力をどのように確保するのか?家族員がどのように労働分担するのか?機械の導入や施設の改善は?雇用を入れるのか、雇用を増やすのか、近い将来法人化し会社経営に移行するのか、加工販売などの新たな経営部門を考えていくのか等、将来に向けての重要な方針決定が必要です。また、改めて、家族員の農業労働時間を測定してみることも現状から無理なく経営発展するために有効です。生活面では、家族員それぞれの個人生活も充実しながら、家庭生活の家事分担もしていくことが必要です。これらのことがうまく調和してこそ、経営発展期の心身の健康を保ちつつワーク・ライフ・バランスを図ることができるでしょう。

【親世代の経営移譲期】は、親世代が60歳以上となり子世代に経営移譲する時期となります。例えば65歳で経営移譲すると予定していた場合、早めに家族経営協定に経営移譲について子夫婦と話し合った内容を盛り込むことが重要です。このことで、親夫婦も経営移譲に向けた準備ができ、子夫婦も経営代表者になる心の準備ができます。農業関係機関や金融機関などにも移譲について伝えるなど、周りの理解も得ていきます。経営移譲後も親夫婦は、農業経営主宰者ではなくなりますが、農業者年金を受けながら様々な農作業や家事、地域社会に関わることで張り合いのある生活が送れます。家族経営協定も経営移譲期の内容に見直します。子夫婦が経営主宰者となった農業経営の方針決定、報酬、家事の分担、親夫婦の扶養や介護、将来の相続に向けての準備などが経営移譲期の協定の重要項目です。このような家族経営協定を拠り所として、ワーク・ライフ・バランスを取りながら現役を退いた親夫婦が健康寿命をできるだけ長く保ち農村での生活が楽しめると良いでしょう。また、経営者夫婦にとっては、親夫婦が経営から退くことにより農業経営の責任と負担が増す時期です。親夫婦の介護についても気になる時期です。使える介護サービスは利用する等経営者夫婦の仕事と家事・介護が過重とならないよう十分ワーク・ライフ・バランスに留意して、満足のいく農業経営と生活スタイルを築いていきましょう。

一般社団法人家の光協会 理事 齋藤 京子